お知らせ

2024-10-21 13:58:00

20241013日(日)と14日(月)の日没直後、山形大学地域教育文化学部児童コースの学生および教員が、山形県内で「紫金山・アトラス彗星」の観望および撮影に成功しました。この彗星は正式には「C/2023 A3 (Tsuchinshan-ATLAS)」と呼ばれ、2023年に中国の紫金山天文台と小惑星地球衝突最終警報システム(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System, ATLAS)によって発見されました。彗星は太陽の近くを周回し、地球の傍を通過することから、世界中の天文学者たちは、この彗星が20241012日ごろから約1週間、西の空の低い位置に明るく現れると予想していました。実際には予想を上回り、巨大な尾を引く大彗星として出現し、国内でも多くのメディアで報道されました。紫金山・アトラス彗星は軌道計算によると、次に地球の近くを通過するのは約8万年後とされており、一生に一度の貴重な宇宙・地球科学イベントとして、世界中で多くの人々が観望や撮影に挑戦しました。

写真:山形県酒田市日本海上空に出現した「紫金山・アトラス彗星」の写真(©竹林知大 先生)。空の方角は西。

 

1013日(日)、本学部2年生の篠原元太さんは、盃山に鎮座する古峯神社から肉眼および双眼鏡(Vixen 21mm 8倍)での観測に挑戦しました。その結果、17:50から18:00ごろにかけて、肉眼および双眼鏡で彗星の中心部(コマ)と尾を確認しました。彗星の明るさは日没直後で周囲がまだ明るく、彗星自体も約3等星の明るさの為、スマートフォンでの撮影に試みましたが写真としての記録はできませんでした。翌日の1014日(月)、本学部教員の竹林知大先生が山形県酒田市釜磯海岸(ジオパーク)で肉眼および一眼レフカメラ(PENTAX K1CANON EOS R5)での観測に挑戦しました。結果、18:00から19:00ごろにかけて、カメラと肉眼で彗星のコマと尾を確認し、彗星全体の写真と動画の撮影に成功しました。

(a): 紫金山・アトラス彗星の観望地点。山形市からは篠原さん、酒田市からは竹林先生が彗星を確認しました;図(b): 彗星出現直前の927日時点での太陽系岩石惑星および彗星の軌道図と位置関係(NASA/ JPL-Caltech加筆)。図の惑星と彗星本体の大きさは強調している。軌道計算結果から、次回の彗星観望は8万年後になる。(c): 紫金山・アトラス彗星の望遠写真 ©竹林知大 先生。

 

13日に観測した篠原さんは、「滅多にない機会に恵まれ、初めて肉眼で彗星を観測できました。双眼鏡で見ると、視野いっぱいに尾が伸びていて、本で見た通りの姿に感動しました」と感想を述べられました。また、翌日に撮影に成功した竹林知大先生は、「山形県内で大彗星の撮影ができ、とても嬉しく思っています。この写真を山形大学の地球科学や地球環境史の講義に活用し、太陽系の壮大な空間的・時間的スケールを学生たちに伝えたいです」と語られました。

 

今回の大彗星との出会いは、46億年の歴史の中で、彗星の軌道が地球の近くを通過した奇跡的な出来事です。山形大学地域教育文化学部がこの大彗星を観望できたことは、太陽系の歴史における一つの重要な瞬間として刻まれたことでしょう。山形大学では、たくさんの素晴らしい出会いがあります。

あなたも素敵なキセキ(軌跡・奇跡)を一緒に刻みませんか。