2025年10月30日(木)17時半ごろから、山形大学小白川キャンパスにおいて「レモン彗星(C/2025 A6)」の観望会が行われました。本学部の教員の竹林知大先生(地球科学)の指導のもと、地域教育文化学部の学生、農学部の学生、そして山形大学名誉教授の今村哲史先生が参加し、秋の夜空に姿を現した彗星を観察しました。このレモン彗星は、2025年1月3日にアメリカ・アリゾナ州のレモン天文台に発見された長周期彗星で、現在太陽に接近中の天体の一つです(*注1)。当日は上空にやや水蒸気が多かったものの、雲一つない快晴に恵まれ、西の空に淡い緑色に輝くコマと、ぼんやりと尾を引く姿を確認することができました。ミラーレス一眼カメラによる撮影にも挑戦し、街明かりでやや明るい空の中でも、キャンパス上空に浮かぶ彗星の姿をとらえることに成功しました(写真1)。
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写真1:レモン彗星(山形大学小白川キャンパスから西の空を撮影)。(a): ミラーレス一眼レフで撮影。中心に映る星がレモン彗星。周囲の恒星が点に写っているが、彗星はぼやけて写っているのが分かる。(b):画像調整したレモン彗星。(c):写真(b)の拡大図で彗星の尾の部分を点線でトレースした。撮影:山形大学竹林研究室(竹林・篠原)。 |
地域教育文化学部の学生からは、次のような感想が寄せられました。
「1300年に一度しか見ることができない彗星を実際に観察できて感動しました。また、観測を通して地球の自転を感じることができた点も印象的でした。」(平田楓さん)
「宇宙の神秘や歴史に触れることができて、とても感動しました!」(齋藤志希さん)
「暗い場所は熊が怖くて諦めていましたが、明るい大学からでも見ることができ、良い経験になりました。」(篠原元太さん)
また、農学部の古幡千香子さんは「初めての彗星観測だったので、カメラ設定や星との位置関係を考えながら探す過程がとても興味深かったです。苦労の末にレモン彗星に出会えた感動は格別でした!」と話されました。
山形大学名誉教授の今村哲史先生は、「自然科学分野では中々見えないものを実際に観察することが大切です。今回、私たちの普段の暮らしでは見ることのできない珍しい自然現象に立ち会えたことを、とても幸せに感じました。」と語られました。今回の観望会を指導した竹林知大先生は、「壮大な時間スケールで起こる天体現象のひとつである彗星を、山形大学の学生と一緒に空を探して見つけることができ、とても嬉しく思いました。これからも学生と一緒に、自然を科学する楽しさを探究していきたいです」と述べました。
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写真2:レモン彗星の観望会の様子。(a):学生たちが西の空を見上げている。(b): ミラーレス一眼に写ったレモン彗星。 |
今回観測されたレモン彗星は、細長い楕円軌道を描いて太陽の周りを公転しており、その周期は1000年以上と推定されています。前回はおよそ1300年前に太陽へ接近していたと考えられ、次に観測できるのはおよそ1100年後になる見込みです。そして彗星は、太陽に近づくと崩壊を始め、木星や土星などの重力の影響で軌道や形が変化することもあるため、条件によっては再び観測できない可能性もあります。今回の観望会は、まさに貴重な天体現象を目にする機会となりました。レモン彗星は、11月中旬ごろまで西の空で観測できる見込みです。みなさんもぜひ彗星の軌跡が創り出す奇跡を探してみてはいかがでしょうか。
(注1):レモン彗星は発見時の観測では小惑星状であったが、発見後、他の観測者によって彗星状の外観が確認されたことにより、「C/2025 A6」の符号および「Lemmon(レモン)彗星」と命名された。なお発見報告後に、発見以前の観測があったことが判明している(国立天文台 2025, 星空情報2025年10月レモン彗星)。
【参考文献】
国立天文台. (2025). ほしぞら情報2025年10月:(解説)レモン彗星の観察チャンス(2025年10月). 国立天文台. https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2025/10-topics03.html (2025年10月31日閲覧)。










